コンテントヘッダー

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
このページのトップへ
コンテントヘッダー

真姫ちゃんセンター選出祈念にこまきss

「いきなり呼んじゃって、ごめん」

 μ'sとしての練習を終え、帰ろうとしていたところを呼び止められた。そのときの彼女の表情は真剣ながらもどこか浮かないもので、その理由が何かくらいは、にこが察するのは容易だった。実際、学校を出てから家に着くまでの時間、彼女は一言として喋りはしなかった。元々口数が多い訳でもない真姫だが、最近の彼女はいつにも増して口数が少ないし、険しい表情をしていた。
 花陽そして凛も心配していたし、恐らく他のメンバーも真姫の変化に気付いてはいるはずだ。

「気にしないの。今日は特にやらなきゃいけないことも無いし」

「……ありがと」

 そしてまた暫くの無言。どうやら相当思い詰めているらしい。イメージカラーの由来である朱色の髪を弄りながら、彼女が何かを言いたそうにしていることくらいは理解できた。
 彼女の母親が淹れてくれた紅茶を一口啜ると、痺れを切らしたのかにこはソファからずいと身を乗り出した。その視線は濁り一つ無く綺麗な紫色の瞳を捉えて離さない。互いの顔の距離が縮まる、だがそんなことなど今は知ったことではない。

「センター、にこと代わる?」

「ッ……何で?イヤよ、絶対」

「なら何か話しなさいよ、だから呼んだんでしょ?やることないとは言ったけど、喋らないお人形さんといてもつまらないから帰る」

「……ま、待って!」

 彼女の声が、応接間に響いた。踵を返したにこが纏う桃色のカーディガンの袖を、真姫は赤子のように掴んでいる。にこは悟られないよう少しだけ表情を緩めると、ソファに座り直した。

「選ばれたときは”やっとセンターになれた”って純粋に嬉しかった。だけど段々不安の方が大きくなってきちゃって。私がセンターで本当にいいのかって。エリーや穂乃果の方がいいんじゃないかって」

 μ'sにおいて一番の自信家である真姫の口から発せられた言葉は酷く弱々しい。未経験の重圧が、彼女に重く伸し掛っていた。にこはそんな彼女の見たことが無い一面に驚くと同時に、それを見せてくれたことに対して表情を弛めた。
 親の敷いたレールの上を間違えることなく歩むため。親の期待に応えるため。どんな理由であれ、真姫は両親の後継ぎとしてきっと色んなことを諦め、そして犠牲にしてきたのではなかろうか。
 ピアノだってそうだ。
 ――私の音楽は中学で終わったの。
 花陽によれば彼女はそんなことを言っていたらしい。だが彼女が奏でるメロディを初めて聴いたとき、楽器には明るい訳ではない自分でもその演奏に魅入られた。彼女の音楽には、人の心を動かす何かがある。そしてそれは彼女が持つ才能なのだ。
 にこは大袈裟に息を吐くと、再び彼女と視線を合わせた。

「別に、好きなようにしたらいいの。少なくとも次のシングルの中心に選ばれたのはあんたなんだから。文句いうやつがいたらにこが許さないから。度胸あるのが取り柄じゃなかった? にこはね、歌に関してはセンターを務めるのは真姫ちゃん、あんただってずっと思ってた。だから聴かせてやんなさい、皆に。あんたがセンターに立って歌うのを待ってた人は沢山いるのよ」

 建前。お世辞。
 そういったものを排除した曇り一つ無い本心、それを聞いた真姫の顔が途端に赤くなる。そしてそれを隠すように俯いた彼女の口元が僅かに緩む。

「は、恥ずかしくないの?そんなこと真顔で言っちゃって。……ありがと、頑張る」

 申し訳なさそうに微笑む彼女の表情が、にこの心に突き刺さる。
 これだから彼女はずるいのだ。にこは後ろを向くと、先程の彼女以上に赤くなった頬を擦る。早く治まれ、治まらんかい。

「何?後ろ向いちゃってどうしたの」

「何でもない、何でもないからッ。何でもありません!」


 おしまい。
スポンサーサイト
このページのトップへ
このページのトップへ
プロフィール

寺田きな粉

Author:寺田きな粉
学生。
ミルキアン兼ラブライバー。
twitter→@wgo_milkian

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
カウンター
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。